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平凡な大学生はなぜ、闇バイトに「流されるまま」従ったのか…心の動きの一部始終 6日判決

2024-09-04 HaiPress

<法廷の雫>


「(暴行を)どうすれば止められたのか、今も分かっていない」

「ルフィ」などと名乗る指示役らによる一連の広域強盗事件で唯一、住人が死亡した東京都狛江市の事件の裁判員裁判。4人の実行犯の1人として強盗致死などの罪に問われた男(21)が8月27日、被告人質問で東京地裁立川支部の法廷に立った。とても人を殴れそうにないひょろっとした細身で、気弱そうに見えた。自信なさげに何度も言葉を詰まらせた。

狛江市の強盗事件2023年1月19日、狛江市の女性=当時(90)=宅で発生。実行役の男4人が宅配業者を装って玄関から侵入し、女性にバールで殴るなどの暴行を加え死亡させ、金品を奪ったとされる。全国各地で頻発した広域強盗事件に関わったとみられる「ルフィ」と名乗る人物らが、メッセージアプリ「テレグラム」を通じて強盗を指示した。

◆ネットゲームで知り合い、押しかけられて同居

元大学生の男が関わった東京都狛江市の事件現場

事件当時は19歳。冒頭陳述などによると、石川県白山市で生まれ育った。高校卒業後は都内で生活し、大学に通っていた。

きっかけはネットゲームだった。高校1年の時にゲームを通じて加藤臣吾被告=同罪などで起訴済み=と知り合った。大学1年だった2022年8月ごろ、加藤被告が押しかける形で同居を開始。親からの仕送りを使い込まれ、光熱費も払えないほど困窮するようになった。加藤被告に「闇バイト」を勧められ、連絡を取った相手が「シュガー」と名乗る人物だった。

連絡手段は、いつも秘匿性の高いメッセージアプリ「テレグラム」を使った。

「明日案件あります」


「人数そろえて行こうと思います」

一度も顔を合わせず、本名も教えられず、どこにいるかも知らぬままアプリで指示を受けた。ためらいはあったが、加藤被告が別の強盗事件を起こしたと話していたことなどから、逮捕のリスクが低そうだと考えた。「お金が欲しい」という気持ちから、ともに強盗への参加を決意した。

◆「ババアをボコして大丈夫」に「もう引き返せない」

2023年1月、参加の意思をシュガーに伝えると、一気に強盗計画の具体化が進んだ。

「相手殺しませんが、万が一最悪のこと考えて」


「ババアをいきなりボコして大丈夫」


「大体大声出すのでみぞおち狙って」

不穏な指示が続き「怖い」と思いながら「もう引き返せないんだ」と諦めた。動画サイトを見続けて不安を紛らわせた。

起訴状によると、男ら4人の実行犯が住人の女性=当時(90)=をバールで何度も殴るなどして死亡させたとされる。男は公判で「自分は殴っていない」と主張し「まさかそんな行動にでるとは」と話した。バールでの暴行を事前に知らず、共謀もしていないとして強盗致死罪の成立を否認している。

◆エスカレートする犯行に「自分も殺される」

被告人質問では検察側から「犯罪グループから抜けることは考えなかったのか」と問われ「流されるままに従った」と答えた。「裏切り者と認定されるのが怖かった」「自分も殺されるかもと思った」と、エスカレートする犯行に逆らえなかった当時の心境も語った。

高校を卒業して間もない大学生が、金欲しさから手を出した「闇バイト」。検察側は「犯行は残忍で凄惨(せいさん)」などとして懲役25年を求刑。判決は9月6日、言い渡される。(松島京太)

随時連載<法廷の雫(しずく)>では、法廷で交錯する悲しみや怒り、悔恨など人々のさまざまな思いを随時伝えます。

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